攻略法で期待値は変わらない:数学的な理由

マーチンゲール法にモンテカルロ法、ココモ法。ネットで「必勝法」と持ち上げられがちなこれらの賭け方が、どうして長い目で見た期待値を動かせないのか。簡単な式とシミュレーションの結果から確かめます。

最終更新:2026-08-30 執筆:高橋 拓真

結論:賭け方で期待値は変わらない

出発点はシンプルです。1回の賭けの期待値は「賭け金 × (−ハウスエッジ)」。これを何回分足し合わせても、合計は次の形にしかなりません。

合計の期待値 = −ハウスエッジ × (1回目の賭け金 + 2回目の賭け金 + … )        = −ハウスエッジ × 総ベット額

攻略法にできるのは、「どのタイミングで、いくら置くか」を並べ替えることまで。1回ごとの期待値がマイナスだという事実には、指一本触れられません。だからどの攻略法を選んでも、平均すれば賭けた総額に比例した分だけ負けていきます。数学の世界ではオプショナル・ストッピング定理と呼ばれる性質が、ちょうどこの話に当てはまります。

マーチンゲール法:小さく勝って、まれに大きく負ける

負けたら次は賭け金を倍に。どこかで一度勝てば、それまでの負けがまとめて戻り、最初の1単位だけ浮く――という理屈の賭け方です。

連敗数次の賭け金(単位)累計損失(単位)起きる確率(赤黒・欧)
53231約3.6%
8256255約0.49%
101,0241,023約0.13%
124,0964,095約0.034%

10連敗と聞くと「1,000回に1回くらいなら平気でしょう」と思いがちです。けれど、うまくいっても1回につき1単位しか増えない仕組みなので、コツコツ積んだ約1,000回分の儲けが、たった一度の10連敗で帳消しになります。しかも現実には、その前にテーブルの上限か手持ち資金の壁にぶつかって、倍賭けそのものが続けられなくなるのが普通です。

モンテカルロ法・ココモ法

日本でとくによく名前を聞く2つで、ダズンやカラムといった配当3倍の賭け方と組み合わせるのが定番です。賭け金の膨らみ方がマーチンゲール法ほど急ではないぶん、資金が尽きるまでの時間は延びます。ただ、当たる確率は約1/3しかないので連敗はむしろ珍しくなく、長い目で見た期待値がマイナスである点も変わりません。

実際の動きは、次の2つのシミュレーターで確かめられます。モンテカルロ法シミュレーターは数列の管理を自動で行い、何千人分もの結果をまとめて試せます。ココモ法シミュレーターでは、連敗したときに賭け金がどう増えるかの表と、破産する割合を確認できます。

シミュレーションで確かめる

たとえば攻略法シミュレーターに、次の条件を入れてみてください。資金5万円、基本ベット1,000円、目標は+1万円、賭け先はヨーロピアンの赤黒。これで1,000セッションを走らせると、だいたい次のような傾向が出ます(乱数を使うので、回すたびに少しずつ違います)。

勝てる回数が多いことと、期待値がプラスであることは、似ているようでまったく違う話です。この差を一度自分の手で確かめておくと、「勝率〇〇%」をうたう宣伝を見ても、落ち着いて眺められるようになります。

よく聞く主張と、その問題点

主張問題点
「月に○万円稼げる必勝法」期待値がマイナスのゲームで、安定して稼ぎ続ける手段はありません。こうした攻略法や情報商材をお金で売る手口は、詐欺でよく見られるパターンです。
「罫線を読めば次が分かる」1回ごとの勝負はそれぞれ独立しています。赤が何回続いたあとでも、次に赤が出る確率は同じです。
「負けを取り返すまでやめなければ負けない」お金も時間も無限ではないので、取り返す前に資金が尽きる可能性はいつでも残ります。また「負けを取り戻したい」という思いは、依存症でよく見られるサインのひとつでもあります。

よくある質問

複数の攻略法を組み合わせたらどうですか?

結果は同じです。どれも1回ごとの期待値には影響しないので、いくつ重ねても合計はマイナスのままです。マイナスをいくら足してもプラスにはなりません。

ブラックジャックのカウンティングも同じ扱い?

少し性質が違います。カウンティングは、まだ出ていないカードの内訳から有利な局面を見極めようとするもので、賭け金の配分をいじるだけの攻略法とは別の考え方です。とはいえ多くのカジノで禁止されていますし、オンラインではシャッフルが頻繁なため意味をなしません。

有料の攻略法や情報商材は信じていい?

おすすめできません。期待値がマイナスのゲームで確実に勝つ方法はないので、「必ず勝てる」という売り文句はその時点で成り立っていません。購入してトラブルになったときは、消費者ホットライン(188)で相談できます。